オーディションのような
君は今まで何人かの男性と付き合ってきた。
僕は今まで何人かの女性を好きになり、その全てがうまくいかなかった。
僕は今の君が好きだし、君は今の僕が好きだ。
今の君は、過去があっての君であり、今の僕は、過去の僕があっての僕だ。
つまり何人かの男性と付き合って来なければ今の君(かわいく、やさしく、あたたかく、そして一般人を超越している)は君ではない。
僕も、どれか一つでも思い通りにいくようなことがあったとしたら、もっと欲深く、腹黒く、傲慢だったかもしれない。
二人にはそれぞれの過去があるから、二人の現在があるのだ。
僕はそれをいまだにうまく受け入れられていない気がする。
忘れているだけ、あるいは考えないようにしているだけなんだ。
いつだったか君は、初体験の相手が僕だったら良かったのにと言った。
本当にそうだと思う。
僕の初めての相手は君だが君の初めての相手は僕ではない。
それによって助かることもあるけれど、初めてではないことは、つまり過去がないことは、特に僕にとって重大な意味を持つのだ。
手をつなぐ時、唇を合わせる時、君が服を脱ぐ時、僕が君の体に触れる時、君が僕をくわえる時、僕が君の中に入る時…
かつてはそういった権利が他の誰かに属していた。
僕の知らない誰かが君にそれをしていたことを想像すると気持ち悪い。
前ほどそんなことは考えなくなっているのだけれど。
一生のうち、1人の人と付き合うことは素晴らしい。
2人と付き合うのは、誰とも付き合わないのと変わらない。
3人以上と付き合うなら誰とも付き合わない方がましだ―――
現代でそんなことを言うのは時代遅れだが、感覚的に僕はそれがしっくりくる。
僕はまだまだ心が狭いっ。
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